ジュエリーが生まれるまで vol.2 原型づくり編

■ジュエリーが生まれるまで vol.2 原型づくり編


宝石の買い付けから製造・販売まですべてを自社で一貫して行う「バーティカル インテグレーションシステム(垂直統合システム)」を導入するTSUTSUMI(ツツミ)。TSUTSUMIのジュエリーが、あなたの手元に届くまでのJourney(軌跡)をご紹介する新連載「ジュエリーが生まれるまで」。第1回目のデザイン編から、次のステップへ。第2回目はデザイン画を立体にして造形する「原型づくり」についてご紹介。

原型づくりで大切にしていること
商品のクオリティを決定するのが原型づくり
2次元から3次元へ CADで設計
3Dプリンターで造形し、銀枠を作製
デザイナーとは各段階で確認を重ねる
ボリュームダウンさせない努力
カチッとしたラインをなめらかに
ブライダルリングでこだわっていること
まとめ

原型づくりで大切にしていること

デザインや品質、コストのバランス。そして、基本的に多くのお客様の手に届くように製造できることが目標になります。デザイン画をしっかりと再現し、どの職人が作製しても同じ品質で仕上がる原型にすること。決められたコスト内でのボリューム感を常に考えながら原型を作製します。

TSUTSUMIでは、宝石の買い付けから完成まですべてを自社で一貫して行っています。原型づくりは、デザイナーをはじめ、手づくりや石留、磨きなどを担う職人まで、各部署からのさまざまな声を聞きながら進めます。各部署へ都度確認しながらの作業は、美しい原型づくりのための大切なプロセスでもあります。

商品のクオリティを決定するのが原型づくり

TSUTSUMIにとって「原型づくり」とは、商品のクオリティを決めるスタートだと思っています。まず、はじめにデザイン画を受け取ったらデザインに沿って、原型づくりを考えます。その際に、デザイナーから腕をもっと細くしてほしいとの要望を受けたとします。その細さは強度的に難しいとの声が職人から上がることもあります。その場合は何を優先すべきかを整理しながら、できる限り各部署の声を反映できるように調整しつつ、原型づくりを進めていきます。

2次元から3次元へ CADで設計

従来ジュエリーの原型づくりは手作業で行われていましたが、最近では、CADを用いるのが主流です。平面から立体へ、2次元のものを3次元に立ち上げていくために、デザイン画を基にCADソフトで3Ⅾモデルを設計していきます。

デザイン画を基に設計をしていくのですが、実際の立体を描く前に、使いたい石を貸し出してもらったり、腕のボリュームや横のラインなどを考えながら、バランスよく丁寧にイメージを形作っていきます。CADの画面と実際のボリューム感は違うので、想像しながら設計しています。

※CAD:Computer Aided Designの略。コンピュータ支援設計と訳され、コンピュータを用いて設計をすることができるツールのことを言います。

3Dプリンターで造形し、銀枠を作製

CADソフトで3Ⅾモデルを設計したら、3Ⅾプリンターで造形します。できあがった造形ワックスを銀で鋳造し、原型となる銀枠を作製します。銀枠をつくったら、そこにリアルなダイヤモンドをはめこんでみて、ダイヤモンドを留める爪の長さが妥当であるか、重ならないか、スキマはできないかなど、実際に作業を担当する職人に確認を依頼します。

手間がかかってしまうような石の留め方や加工の仕方は、コストに反映するだけでなく、仕上がりや品質にも大きく関わってきます。そのためこの段階で、ジュエリーづくりに携わる職人に一つひとつ相談しながら、細かいデザイン部分を擦り合わせ、調整をしながら美しい原型に仕上げていきます。

デザイナーとは各段階で確認を重ねる

デザイナーとは、CADの画面共有ができるので、CAD画面でのイメージ、試作、原型完成と、段階ごとに確認を行っています。例えば、面の形や爪の本数、角度などがこれでいいのかなどの確認も行います。途中からお互いのイメージが変わることもありますので、その際には調整を行っています。デザイナーとの距離も近いので、都度話し合いを重ねています。

CADである程度立体を作ると、体積データを出すことができます。体積データが出るとそこから重量(グラム)を算出できるので、試算を出すことも行っています。

ボリュームダウンさせない努力

地金の高騰があり、デザイナーが思い描いているイメージや指定されたデザイン、望んでいるものが、販売する価格とあわなくなってくる場合があります。ジュエリーのボリュームを大きくすると予算がオーバーしてしまうけれど、見た目のボリューム感を落としたくない。どこでその立体感を出すのか、CADの画面の中で数字と戦う日々です。

カチッとしたラインをなめらかに

CADによる設計はカチッとした機械的なラインになりがち。やわらかいラインや面が出せるように常に意識しながら設計をしています。シンプルなデザインのジュエリーほど、きれいなラインを出すのが難しいです。特にS字やウェーブなどは、どんな指のサイズの方にでもきれいに着けてもらえるような形をイメージしながら原型づくりを行っています。一般的に作るのが簡単そうと思われるデザインほど、原型づくりは難しいと感じています。

ブライダルリングでこだわっていること

ブライダルリングは着け心地が良くサイドから見てもきれいなラインが出るように断面形状を考えて設計しています。平らでエッジがあると、角が指にあたってしまうため、丸めたりします。ひとつのリングであっても厚みや幅を微妙に変えて、着け心地にこだわります。また、結婚指輪には、内側にイニシャルや名前、日付を刻印するため、それらが入るアームの太さや幅を考えなければいけません。丸めれば丸めるほど、着け心地は良くなりますが、ふたりにとって記念となる大切な刻印の文字やストーンのセッティングができるように厚みの調整を行っています。

まとめ

デザイナーさんと実際にジュエリーを作製する職人さんの間を行ったり来たりしながら、双方の要望をヒアリング。デザインを優先するのか、作製を優先するのか、何を取って、何を切るのかをCADに向き合いながら試行錯誤するそうです。原型づくりを担う職人による緻密な作業と創造力で、デザインが平面から立体に表現されます。原型づくりは、TSUTSUMIの商品クオリティを決めるスタートと聞きました。そこには約160店舗に行き渡らせるために、誰が作っても同じ指輪になるような原型づくりをしなければならないという大きなミッションが広がっています。それは責任重大であるが、やりがいや喜びも大きいと話してくださいました。